01 01:25(一度目の休憩ポイント)



日頃の不摂生が原因か、なかなか寝付けなくて携帯をいじりながら、高速道路をひた走る夜行バスに揺られていた。
ツアー客の大体は俺と同じような夜型の若者のようで、まだ寝ているやつの方が少ない。
周囲を一見しても、寝ているのは藤田だけだ。
窓側の藤田は俺の横で眠りこけていた。
厚めのぽってりした唇を微妙に開けて、窓に頭の重みを預けて眠っている。
間の抜けた表情と言えばそれきりなのだが、気持ち良さそうに眠っているのでそんな表現はしないでおいてやる。
意図せず緩ませていた口元を引き締めた。

ずっと直線で動いていたバスが迂回し、乗客の体を大きく揺さぶった。
何事かと藤田が頭をつけている窓に目をやると、何台か観光バスが停まっていた。
寂しい暗闇の中に煌々と光が灯っていた。その中にちらほらと人影も見える。
巨体が近くの観光バスに倣って駐車スペースに落ち着くと、どろどろと唸り続けていたエンジン音が呆気なく止まった。

添乗員のおっさんが何か言っていたので耳を傾けると、どうやら今から二十分ほど休憩の時間があるらしい。
喉も渇いたし外の空気も吸いたかった。
防寒具を羽織り貴重品をポケットに滑り込ませた。
隣の奴も誘ってやろうかとちらりと藤田を見る。起きる気配は無かった。

「……ま。いいか」

呟いて通路側に出ると、前の座席の並びがよくわかる。
周りは女子ばかりでどうも気まずかったので、目を合わせないように下を向いて速やかに通路をすり抜けた。

(……まあ、こんなのに男二人で行くのがそもそもおかしいんだけど)

色んな意味で笑ってしまいそうになるのを堪えて階段を駆け下り、開きっぱなしのドアの取っ手を支えに地面へ飛んだ。

肌寒い夜の駐車場に吹く風が俺の首筋をぞおっと撫ぜた。明かりの灯る場所からはある程度離れており、一度それと駐車場を見回す。
広がるアスファルト。
その広さの脇に、ぽつん、と寂しくある建物。
人工的なそれらが暗い空の下に寂しく広がる様に何ともいえない恐怖感が芽生えて、自然と足が明るい建物内に向いた。

*

施設の中に入ると暖房が利いていて、冷えた首筋や頬を緩ませた。温かい。
まばらながらに人もいる。何となく寒々しい道路とは偉い違いだと溜息をついた。

くるりと左を向くと目当ての自販機が目に付いた。
あらゆる容器で飲み物が並べられていた。あったかいのもつめたいのも。とりあえずお金を入れて、ボタンを点灯させた。
別段どれが飲みたいと拘っていたわけではなかったので、適当に目に付いたものを選んで押した。
取り出し口に手を突っ込むと、じわりと熱が伝わった。



迷わずにバスに戻ってこれた。
ほっとしながら女だらけの座席を進み、指定された列の椅子へ戻っていく。
自分の席を見つけた直後、藤田に眠たそうな目で見られていることに気が付いた。

「ああ、起きたのか」
「……何で起こしてくれなかったんだよ」

寝ぼけ眼で見つめられているのかと思いきや、そうじゃなかった。俺はきつく細められた目で睨まれていた。
眠たそうな声をしていることから、起きたのはついさっきらしい。威厳も半減している。

「体伸ばしたかったのに。外の空気吸いたかったのに。飲み物とか買いに行きたかったのに」
「だってお前気持ち良さそうに寝てたからさあ」

藤田の二言目は無視して簡潔に理由を述べると、奴はそれきり黙った。
窓の縁で頬杖を付いて、唇を尖らせながら他のバスが次々出発するのを見送っていく。
寝起きに臍を曲げられてしまうと、向こうが折れてくれるのは時間がかかりそうだ。
ため息代わりにふ、と鼻を鳴らしてポケットに入っていた戦利品を藤田の頬に押し付けた。

「っ、あっつ!」

周りへの配慮か、叫ぶ声は幾分か大人しかった。
ただ体は反射的に身を守ろうと藤田を窓側へ追いやった。がん、と鈍い音がして頭がぶつかる。
そのまま俺へと振り向き、目を白黒させている藤田に思わず笑ってしまった。

「やるよそれ」
「は?」
「それで機嫌直してくれよ。次行く時はちゃんと呼ぶから」

な?と駄目押し。
藤田はむくれたまま、無言で俺の手から温かいそれを受け取るとキャップを回した。

エンジンがふかされ、車体が少しだけ揺れた。
啜って一言「ケンジとサービスエリアで遊びたかったのに」と呟いたときには、奴の頭を抱え込みたくなる衝動に駆られた。
もちろん。やめておいたけれど。

この後俺達二人は知らぬ間に寝ていて、次に起きた時には二つ目のサービスエリアを通過してしまっていた。




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中高生男子が二人旅とかかわいいです全力で愛でたくなります^^
2010.04.20
2012.02.03 加筆・修正。

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